読み歩き亭

歩いて、片づけて、寝ています。

寝る前に読んでやった本、1

 

 読んでいて、泣きそうになって困った。

お父さんのバックドロップ中島らも集英社文庫

 悪役プロレスラーの牛之助とその息子のカズオの物語。父のことを尊敬できないと言うカズオ。牛之助は黒人空手家「クマ殺しのカーマン」と対戦することになる。果たして結果はいかに、というのがあらすじ。

 寝る前に、うちの小学生の息子に、「なんか読んでやるか?」と聞くと、「喧嘩の本がいい」というので、俺がこれを引っ張り出してきた。喧嘩の本といっても、小学生相手なので、あまり残酷だったり性描写があったりすると困る。その点この本はもともと児童書なので問題はない。喧嘩というより格闘技だけど。

 牛之助が「今日は俺はたった3人のためだけに戦う」と言うシーンで、読んでいて泣きそうになり、声が詰まる。なんとか読み終わって、息子に感想を聞くと、「まあまあ」とのこと。ま、そんなもんでしょ。でも、そこそこ身を入れて聞いていたようだった。

解説・夢枕獏

 本書はこれ以外に3篇を含む短編集だが、解説の夢枕獏は「お父さんのバックドロップ」のことのみを語りまくるという豪快っぷり。しかし、ほんとうに好きなのだということが伝わってくる。

登場人物のモデル

 牛之助は上田馬之助ジャンボ鶴田ザ・グレート・カブキミックス。

 カーマンはウィリー・ウィリアムス。

 ジャイアント古葉はジャイアント馬場

 ジャイアント古葉が鴨居に頭をぶつけて「あ、ぱあ・・」と言う場面で、息子は元ネタは知らないが笑っていた。

中島らもの慧眼

 本書で牛之助はアマレスのバックボーンがあり、それをもって異種格闘技戦に挑む。

 1990年代後半、日本人プロレスラーの多くが総合格闘技に打って出るが、この本のようにうまくいくことはまれだった。その中で強く印象に残っている日本人が勝利した試合が、高橋義生VSヴァリッジ・イズマイウアレクサンダー大塚VSマルコ・ファス、桜庭和志VSグレーシー一族、で、この三人は皆アマレス出身者だった。

 それより10年も前に、格闘技におけるアマレスの優位を中島らもは見抜いていた。

お父さんのバックドロップ (集英社文庫)

お父さんのバックドロップ (集英社文庫)