読み歩き亭

歩いて、片づけて、寝ています。

寝る前に読んでやった本、6

ロビンソン・クルーソー

 

 長男が選んだ本はこれ。

 まず挿絵が格調高い。画家はサーニとなっていて、調べてみてもよくわからなかったが、いわゆる西洋絵画。

 最近の児童書の挿絵はアニメ風が多く、それはそれで読みやすくて否定しないが、古典文学に重みのある絵がついているのも良い。

 国際版少年少女世界文学全集第7巻(小学館)。

波乱万丈の見本

 本作で有名なのはもちろん無人島でのサバイバルだが、冒頭には海賊の奴隷になる話があり、無人島を脱出してからもピレネー山脈でオオカミに襲われる話がついている。盛りだくさん。胃にもたれるくらいコテコテだ。

 「レ・ミゼラブル」も六月暴動や修道院、下水道の描写が延々長かったし、「ガリバー旅行記」も、有名な小人の国以外に様々な国、そして日本にも行っている。これでもかってくらいに話を盛るのが、古典的サービス精神なのかもしれない。

大人にも子供にも

 いままで読んだ中で一番面白かった本は「ロビンソン・クルーソー」だと小学生の長男は言う。俺が読み聞かせするのを横で聞いていたカミさんも「それ、面白いね」と言っていた。

 主人公が直面する困難にリアリティと意外性があり、それを創意工夫で克服していく。

 例えば、小麦を栽培してパンを作ろうとするが入れ物がない。そこで粘土を見つけてきて、四苦八苦のすえ器を焼き上げる。その器で山羊の肉を入れたスープを作る。漂着して4年ぶりに熱い飲み物を口にする、とある。

 読むと「熱い飲み物」のありがたみが伝わってくる。

 失敗のほうも面白い。5か月もかかって丸木舟を作るが、完成した船が重すぎて海まで運べないこと気づいたりする。いかにもありそう。

聖書

 発熱し、不安にさいなまれたとき、船から運んだ箱の中に聖書をみつけ、それを読んで心の平安を取り戻す場面がある。それからロビンソンは朝と晩に必ず聖書を読み、危機のたびに聖書に助けられる。

 俺はキリスト教徒ではないが、聖書1冊の持つ力というものを考えさせられた。

 物語の後半で現地人のフライディが従者となる。フライディには彼なりの宗教観があるが、ロビンソンはなんとかしてフライディをそこから「すくいだそう」とする。

 ここまでくると現代の文化相対主義的感覚からすれば、よけいなお世話だ。当時とすれば当然なのだろうけど。

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解説 中央大学教授 佐野雅彦

 解説も面白かった。

 はじめて知ったことが多かった。

 まず本書は世界初の一人称創作文学であったということ。当時の人々は実話だと信じ込んだというが、そりゃそうだろう。

 また、「ロビンソン・クルーソー」は好評をうけて第三部まで書かれたけど、内容は第一部におよばず今日ではほとんど読まれていないこと。たしかに聞いたことない。

おじさんの星

 そして、作者デフォーは「ロビンソン・クルーソー」が第一作で、書いたのが59歳だったということ。

デフォーは、ろうそく屋の子どもとしてロンドンに生まれました。長ずるにおよび、いろいろの仕事に手を出しましたが、たいていは失敗し、破産の憂き目を見ています。

とあり、そののちに一躍文名をとどろかせたわけだ。

 ある意味、一番ワクワクさせられた。

 世界初の一人称創作文学という発明と、多くの痛みを伴った経験と、緻密なストーリーの構築、という3つの要素がかみ合って名作が生まれたのだろう。

大航海時代の冒険心

 全体を通じて、大海に漕ぎ出し一山当ててやろうという空気がみなぎっている本。今だったら、ネットの荒波を潜り抜けて仮想通貨で億り人を目指すかんじか。